水耕栽培で育てていたお野菜
- 佐藤秀行
- 2月15日
- 読了時間: 10分
更新日:3月16日
前回のブログで、わたしが水耕栽培で育てた経験のある野菜を紹介しました。それらを育てる上で、良かった点、難しかった点を今回はお伝えしようと思います。あくまでいち地域のいち施設(鉄筋+強化ガラスの太陽光型施設、NFT、コンクリート土間)での栽培のお話で
地域や施設が変わればお野菜の生育状況はかわりますし、あくまで個人の感想ですので、ご了承ください。
![]() フリルレタス | 葉先がフリルのようにギザギザで、肉厚でシャキシャキとした歯ごたえがとても人気です。 たくさんの品種が出ていますが、なかでも発売から年数が経っていますが、雪印種苗「フリルアイス」の食味は苦みが少なく甘みが感じられ、お子様からの人気も高いです。わたしが飼っている柴犬もこのレタスへの食いつき方は他のレタスと違います(笑) | やはりレタスは高温が苦手で、徒長や、グネグネと葉が巻いてしまう「タコ足球」で形状が安定せず、夏場は苦労しました。食味も苦みが出てきます。葉先のギザギザ部分のちょっとした枯れをゼロにすることも難しく、それを嫌う厳しいお客様には苦労しました(笑)。チップバーンが出にくく形状の安定性が高く、ボリュームもあるハンサムグリーン(横浜植木)、ラリック(高田種苗)、ハイドロリック(高田種苗)という品種に、夏場は変更したりもしていました。 |
![]() レッドオークレタス | 葉が柔らかいので柔らかさを求める方や、クセのない食味、鮮やかなワインレッドの色合いには、人気がありました。品種はロウサイ(高田種苗)を栽培していました。 フリルレタスとセットで販売をしたり、コンパクトにまとまるので他の野菜ともセットにしたりして人気がありました。 | この品種だけではないのですが、赤軸のミズナやカラシナなども含めて、夏場の高温下では赤みの発色というのがなかなか出ないので、緑色が強くなります。 きれいな発色を求めるとなると、秋~春向きの品種となります |
![]() カーリーケール | 水耕栽培でケールを栽培しているところは少ないと思います。ケール=青汁=苦い~もう1杯!=生で食べれない、というイメージを持たれている方も多いですが、水耕栽培で育てると苦みやえぐみがほとんどなかったので生食をおすすめし、お子様にも人気がありました。栄養価がとても高いです。スムージーや、キャベツの代用で意外にレシピの広がりがあるお野菜です。葉が肉厚なジュリアーノ(小林種苗)を栽培してました。一般的には、カリーノケール(トキタ種苗)が多いと思います。 | 面積当たりの生産性の高さが植物工場のメリットです。収益を上げるためには、定植から収穫までのサイクルをいかに早めるかがポイントです。葉をかいて収穫していくようなサンチュやケールは生産性や出荷作業の効率からも、不向きな野菜です。実際、45穴の栽培パネルに5~6株の定植でしたので、生産性はかなり低かったです。茎を切るので日持ちもしません。ただその希少性で、ブランド戦略のひとつとして位置付けて栽培をしておりました。 |
![]() サラダこまつな | 露地栽培と同様に、とても栽培しやすいお野菜です。茎がしっかりしている分、取扱いもしやすいので、実習生の最初の収穫に位置付けていました。 栄養価が高いので、こまつな+ケール+バナナのスムージーなどもよくオススメしておりました。 菜々美・菜々音(タキイ種苗)、江戸の舞(日本農林社)など栽培してました。 | 水耕栽培で育てたこまつなは、確かに露地ものよりも柔らかいので「サラダこまつな」として販売していましたが、生は好みが分かれるかもしれません。露地ものが多く、高値がつけにくいですが水耕のこまつなでないと子どもが食べないというお声をよくいただき栽培しておりました。季節によって品種を変える必要があります。雪印種苗の「のりちゃん」がいい品種だったのですが、発売中止になった時はとても残念に思いました。 |
![]() スイスチャード | 赤、橙、黄、桃、黄緑、白など、目を引くカラフルな色合いが特徴です。売場では「わぁ~きれい!」と言われながら、手に取られないことが多く(笑)、食べ方の提案が必要です。食べ方の提案と言っても、肉厚な食感とクセのないお味で、ぜひ生で召し上がっていただきたいです。和名を「西洋フダンソウ」と言い、フダンソウ(=不断草)の名は、育てやすく年中栽培できることからきており、ほうれん草の仲間で栄養価の高いお野菜です。 | 育てやすく、特に問題を感じることはありませんでした。あえて挙げるなら、 種子の値段が少し高いこと、 成長が早く特に夏場など一日の収穫のずれで驚く大きさになっていること、 収穫後の時間の経過で、下葉を処理した根本の部分がにゅるっとなり色素が溶け出すこと、 くらいでしょうか..もっと一般的になってもいいお野菜のように感じます。 赤色、黄色と色分けした種子の販売もあります。 |
![]() サラダほうれん草 | 真夏でもほうれん草が育つ、というのが水耕栽培の大きなメリットではないでしょうか。そして、ほうれん草を生で?と思われる人も少なくないと思うのですがそのえぐみの少なさと、砂のジャリっを経験することなく、サッと簡単水洗いで使えるところに、働く忙しい方に人気がありました。もちらん、栄養価はばっちり。春秋はミラージュ(サカタのタネ)夏はプリウスアルファ(トキタ種苗)、冬は牛若丸・弁天丸(タキイ種苗)などを栽培してました。 | ほうれん草を育てる水耕栽培施設は多いと思います。またこまつな同様、露地ものが多く、高値をつけにくいお野菜です。ハイテンポArとハイテンポCu(住友化学)を配合する養液栽培では、ほうれん草の濃緑を出すために、プラスして硝酸加里の養液が必要でした。他の野菜よりも、病気を起こさないための衛生的な配慮が必要でした。 こまつな同様。季節によって品種を変える必要があります。 |
![]() ルッコラ(ロケット) | ゴマのような風味とピリッとした辛みと苦みが特徴でイタリア料理には欠かせないハーブですが、日本でもルッコラはだいぶ馴染みになってきたと思います。成長も早く、育てやすいので、自ら家庭菜園で育てているとイタリアンシェフからお聞きすることも多いです。水耕栽培でも、その風味はしっかりと出ますし、育てやすいお野菜です。中原採取場のロケットサラダを栽培していました。 | 水耕栽培で育てると特に、葉が薄く柔らかいため、梅雨の時期など朝露が付いたまま収穫し、濡れたまま袋詰めすると、すぐに葉が溶けた感じとなり商品価値が下がります。ですから急ぐ時には扇風機を当てながら、葉が乾いてから収穫しなければならず、収穫タイミングに気を遣うお野菜でした。葉が黄色くなる時間が早く、他に比べると日持ちがしないお野菜です。 |
![]() セルバチコ | 別名「ワイルド・ルッコラ」と呼ばれるように、ルッコラよりも香りも辛みも強く、とてもパンチのあるハーブです。とても丈夫で、扱いやすいお野菜です。 すぐに小さくかわいい黄色い花が咲きますが、花もエディブルフラワーとして利用できますので、そのまま出荷できます。高級なフレンチやイタリアンのお店でお取引いただけるケースが多く、一般のスーパーにはなかなか並ばないハーブです。 | 育苗の期間は、ルッコラの約10日間に比べると約18~20日間と倍かかります。 種子がめちゃくちゃ小さいので、播種に苦労します。値段が高いですが、種子がコーティングされたもの(ルーコラ・セルバーティカ:トキタ種苗)もあります。 |
![]() パクチー(コリアンダー) | タイ語由来では「パクチー」、英名は「コリアンダー」、中国語由来では「シャンツァイ(香菜)」と呼ばれ、世界中で広く料理に使われているハーブ。日本での産地は福岡県が生産量一位で、関西では九州産の扱いが多いですが、毎夏、気候災害の影響で、供給不足が起こり、引き合いの問い合わせがあります。高値で取引もされます。まだまだ需要がありますので、必ず売り先が見つかるお野菜だと思います。 | 好き嫌いがはっきりと分かれますね。 日本ではパクチーの名が浸透しているせいか、タイやベトナム、インドの暑い国のイメージがありますが、実は地中海東部原産。だから暑いのが大の苦手。夏場はチップバーンに苦しめられます。中心部の新芽が茶色になるので、根元を切り落として葉と茎だけをパックにして販売しているところも多いですね。チップバーンが起こらないパクチーの品種が出来たらノーベル賞ものだと思っていたくらいです笑。種子(実)は硬いので、他の種子より蒸らしの時間が必要です。 |
![]() 赤茎(軸)みずな | 意外に知られていないのが、みずなは京野菜ということ。江戸時代初めには九条や東寺あたりで栽培されていました。畑の畝間に水を流し入れて栽培したことに由来する名前。機能性成分アントシアニンの含量が、通常のみずなよりも豊富な品種。紅法師(タキイ種苗)を栽培していました。夏場は定植して12、3日で出来上がるくらい成長が早いです。 | 夏場の高温下では、紅色の発色が出ずらく、ただのみずなになります笑 水耕栽培パネルの株間は狭いので、大きくなったみずな同士は葉が絡み、少し収穫しずらいです。 |
![]() ミニセルリー (ホワイトセロリ) | 一般のお客様はセロリと呼ぶ方が多いと思いますが、日本の野菜生産出荷安定法ではセルリーとなっていますので、農業関係者はセルリーと言います。また最初に栽培が始まった長野県では、一般の方もセルリーと呼ぶらしいです。通常のセルリーと違い、筋を取る必要もなくそのまま使えます。葉も茎もすべて使え、食欲をそそるマイルドな香りで、食味はクセがなく、スープやサラダに最適です。人気がありよく売れていました。品種はミニホワイト(タキイ種苗)が主流です。 | 種子がとても小さいです。蒔き過ぎると混みあいますが、発芽率にバラツキがありましたので、粒数の調整が難しかったです。1穴に8~10粒で播種していました。育苗期間含め栽培期間が長くかかり栽培ベッドの回転が落ちますので、よく移植をしていました。いい香りに誘われて虫が寄ってきやすかったため、ミニセルリーの周りには必ず黄色と青色の捕虫シートを設置していました。 |
![]() レッドソレル(オゼイユ) | 英名がソレル、仏名オゼイユ、和名がスイバ(酸い葉)。シュウ酸を多く含んでいるので爽やかな酸味と表現されますが梅やレモンに似た、なかなかの酸っぱさです。しかしこの酸っぱさにクセになる方が続出し、リピーターが増えました。鮮やかなグリーンにレッドの葉脈がお料理を彩ります。フランス料理ではサラダや鶏・鴨肉の詰め物、サーモン料理に使われることが多く、ポピュラーなハーブのひとつです。中原採取場のレッドソレル(オゼイユ)を栽培していました。 | 発芽が遅く、育苗期間が1カ月弱くらいかかります。しかし定植してからの成長はとても速いです。レストランシェフからのリクエストで大きさが決まっている場合には、収穫タイミングの難しさがあるように思います。 |
![]() スティッキオ | スティッキオは、ハーブのフェンネル(和名:ウイキョウ)をスティック状に改良したものです。食欲をそそる爽やかな香り、ほんのりとした甘さで、生食に適しており、シャキシャキした食感が楽しめます。 スティッキオ(トキタ種苗)には通常のものと、一般地で栽培が難しくなる2~6月用に改良された四季まきスティッキオがあります。 | メーカーの写真などでは、葉の部分が切り落とされて茎にの部分だけになっていたり、茎を楽しむレシピが多いです。私が納めていたレストランでは、葉の部分も大切でした。四季まきスティッキオを栽培しても、夏場の葉の枯れを防ぐのは非常に難しかったです。根元部分の使用を前提としたご提案をされる方がいいかと思います。 |
![]() サラダ春菊 | 春菊には葉の大きさと切れ込み込み具合によって、小葉種・中葉種・大葉種の3つに品種が分かれます。サラダ春菊には、葉が大きくて葉肉が厚い大葉種が使われるようですが、一般的に市場に出回っている春菊は、葉の切れ込みが深い中葉種がほとんどです。関西では根から株が枝分かれしている「株張り中葉種」が主に関東では太い茎から株が出ている「株立ち中葉種」が主に流通している。 | サラダ春菊は意外にニーズがあり売れます。また春菊自体、すき焼きを扱う飲食店では年中使用しますので、夏場に供給が不足したりします。しかし、パクチー同様に夏場はチップバーンがとても発生します。特に中心部の新芽が茶色になるので、なかなか株のまま出荷することが難しく、栽培をあきらめました。 |
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